● 絵本「階段 / Stars」 求龍堂 
 
よく人生を階段にたとえるけれど、わたしは階段のどこにいるんだろう。
軽快にのぼっているだろうか。立ち止まってやすんでいるだろうか。
その階段をきちんときれいにしているだろうか。
……この少女は、わたしかもしれない。
 
 
 

書誌情報
4月 10 日 配本
書名/階段 STAIRS
仕様/A4 変型 、 上製本 カバー掛け、総頁 56 頁
定価/3,850 円 (本体 3,500 円+税) ISBN978-4-7630 -2329-2 C0771
お問い合わせ先/株式会社求龍堂 深谷路子(編集)
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町 3-23 文藝春秋新館 1 階
TEL03-3239-3382 (編集部 FAX 03-3239-3376)

 

あなたは、知らない心の奥を覗き見ることになるだろう。
目にみえない心を見透かされてしまう
おそるべし原高史 
                                                    映画監督 前田哲
                         『花まんま』『九十歳。何がめでたい』 

 
 
本書にはそもそもストーリーはない。階段、少女、蝋燭、ほうき、このわずか4つのモチーフが織りなす、切り取られた一場面。読者は遠くからこっそりとこの少女を覗くことになる。決して描かれない少女の表情を想像し、その先にある感情に思いを巡らせる。少女の頭上には小さな蝋燭に炎が灯っている。炎はゆらゆらと揺らぎ、その方向は空気の流れを示す。
これは、少女と階段で描かれた空間を具体的に想像する際に、読者に与えられた唯一のヒント 。
自分の思いを少女に投影し、自分だけの少女像を思い描きながら読みすすめ、最後のページをめくる頃には、読者が覗き見していた少女は 、 いつの間にか自分自身になっていることに気づく。
この絵本は、読者がストーリーテラーであり、ときに自分を映し出す鏡にもなる。
絵本を開くたびにまったく異なる少女像を自ら描きだすことで、自分という他人、他人という自分に出会う。このひっそりとした体験は、 大人の絵本の醍醐味といえるかもしれない。
まずは手に取ってみてほしい。
本を開くたびに見方も思うことも変わる。いろんな思いが巡る。どう読んでもいい、自由に読んでいいって、こんなにも楽なんだってことに気付く。いつのまにか 、あなたは笑顔になっているかもしれない。
 
 

HARA TAKAFUMI 

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